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「いい革」とは?鞣し(なめし)と仕上げで革は変わる!

私たちの身近に溢れている革製品ですが、動物の“皮”が“革”になり私たちの手元に届くまで、実に多くのプロセスを経ていることをご存知でしょうか。その中でも革の仕上がりに大きく影響するのが「鞣し(なめし)」と「仕上げ」の工程です。

革の基礎である「鞣し」と「仕上げ」について知り、本当にいい革とは何かを探っていきましょう。

目次

◯鞣しとは?

鞣しとは、それまで「皮膚」であった動物の皮を「革」へと生まれかわらせる技術のことを言います。

そもそも皮は時間が経つと乾燥して硬くなり腐敗してしまいます。それを防ぎ、製品として使える素材へと加工するのがこの鞣しの工程です。古代の人々は、草木の汁や動物の脂を使用したり、また煙で燻すなど自然界のものを利用しながら柔らかく丈夫で美しい革をつくるため、試行錯誤を重ねてきました。

現在は植物由来成分である「タンニン鞣し」と、化学薬品の塩基性硫酸クロムを使用する「クロム鞣し」が主流となっています。どちらもそれぞれ長所・短所があるので、自分の好みやシチュエーションに合わせて選ぶと良いでしょう。

◯鞣しの種類

・タンニン鞣し

太古の昔から行われている最も古い製法で、樹皮や木材、葉など植物から抽出した「タンニン(渋)」という成分を使って鞣す方法です。ドラムにタンニンなめし剤を投入し、タンニンを皮にたたき込ませていきます。非常に手間と時間がかかる上、熟練の技術と広大な敷地が必要になるため、国内ではあまり対応していません。
革に負担をかけず芯までタンニンの成分が浸透するため、丈夫で美しい仕上がりが特徴です。また、使うほどに馴染んで深みと渋みを増していくため、経年変化を存分に楽しむことができます。

・クロム鞣し

クロム鞣しとは、天然の鉱物から採れたクロム化合物や、塩基性硫酸クロムなどの薬品を使って鞣す方法です。タンニン鞣しに比べてコストを抑えつつ短時間で鞣すことができるため現代では主流の製法で、幅広い製品に利用されています。ドラムにクロム鞣し剤を投入すると、1日程度で鞣すことができます。
クロム鞣しで仕上げた革製品は丈夫で色褪せしにくく、お手入れ必要がほとんどありません。また最近ではタンニン鞣しと組み合わせて、両方のメリットを活かした製法も開発されています。

◯革の仕上げについて

革を鞣した後は、仕上げを行います。

仕上げは革の見た目や風合い、素材感を表現するための最終工程で、「革にお化粧施す」と表現されることも多いとても重要な作業です。
キズやキメを目立たなくさせ、革製品として使いやすい美しい革へと仕上げていきます。
革の仕上げ方法は、主に「素仕上げ」「染料仕上げ」「顔料仕上げ」の3つに分けられます。
革の種類や特徴、目的により仕上げ方法が異なり、仕上げをする前とした後ではかなり印象が変わるため、どのような表情を浮き上がらせるかで個性を出すことができます。

・素仕上げ

着色剤や仕上げ剤などの薬品をほとんど使用せず、最低限の染色だけで仕上げた革のことを言います。限りなく革の素に近い状態に仕上げた革で、革の持つ表情や質感を生かす仕上げ方法です。ナチュラルな風合いや個性を楽しめるところが魅力で、使うほどに色や艶が深まり、革製品の経年変化(エイジング)を楽しむことができます。

・顔料仕上げ

革をコーティングするように表面に顔料を塗布して定着させる方法を言います。革のキズやしわを隠すことができ、均一的に仕上がるところが特徴です。革表面に塗料をのせるため革特有の表情を隠してしまい、革らしさは多少失われますが、キズが付きにくく、色移りや色落ちがしにくいというメリットがあります。きれいな状態を長く保つことができるので、レディースのバッグや靴などに多く使われています。

・染料仕上げ

革表面だけでなく、繊維の中にまで色を浸透させて染めあげる方法を言います。主にアニリン染料を使用することから、アニリン仕上げと呼ぶこともあります。染料を革の表面にのせるのではなく浸透させるだけなので、革本来が持つしわやキズなどをそのまま表情として楽しむことができます。湿度や摩擦によって色落ちや色移りが起こることがあり注意が必要ですが、革本来の手触りや見た目が失われず、本革らしい経年変化も楽しめます。カーフスキンなど比較的キズの少ない高級革には、染料仕上げが多く使われています。

◯まとめ

同じ動物の皮でも、鞣し方や仕上げの方法によって最終的な革の特徴は全く異なるものになります。「いい革」の基準は人によってさまざま。革には色々な表情があるので、気に入ったものを選ぶことも革の一つの楽しみ方と言えます。まずは「鞣し」と「仕上げ」に着目し、自分にとって最良の革を探してみましょう。