
私たちの身の回りには様々な革製品があり、いつの時代もたくさんの人々を魅了しています。使い込むほどに味が出て、唯一無二の存在感を放ちます。
今回は、革製品がなぜこんなにも人々に愛される理由について、その歴史から紐解いていきます。
◯革の歴史

人と革の歴史は古く、その始まりは約200万年前まで遡ります。私たち人間は新石器時代以降、寒さをしのぐために動物の皮を防寒用や居住用テント、その他にも生活用品として利用してきました。
世界で初めて皮革加工用の道具を使ったのは、ネアンデルタール人であると言われており、彼らの遺跡からは皮革加工用の石器も発見されています。その後、革の加工技術はいろいろな地域へと伝わり、叩いて、揉んで、燻すといった「鞣し」の技法に発展していきます。
紀元前600年頃には地中海沿岸近辺で植物性タンニンを使用した「タンニン鞣し」が生まれ、その後も様々な鞣し技術が開発されていきました。
そうして加工された革から衣服や寝具、武具などさまざまなものが作られ、それらは貿易のための重要な商品となりました。古代エジプトでは山羊や羊の革を乾燥させて作った記録用紙が使われており、非常に耐久性が高いため、今でも紀元100年以前の資料を見ることができます。
19世紀後半になると、近代化とともに新しい革の鞣し方法が開発されるようになりました。その結果できたのが、金属を原料とした「クロム鞣し」です。クロム鞣しはタンニン鞣しに比べて作業時間が短く済み、また経済的にも優れていることから、革の大量生産が可能となりました。現在では、皮革の約8割にクロム鞣しが採用されています。
◯革の魅力とは

このように、遥か昔から私たち人間とともに歩んでき革。
次は、多くの人々を魅了し続ける天然皮革の魅力に迫ります。
■使い込むほどに味が出る
革の1番の魅力は、使い込むほどに味わいが増す唯一無二の存在感ではないでようか。
使いはじめは硬いと感じる革でも、次第にしっとりとした柔らかな手触りに変わっていきます。使っていくうちに見た目や感触などが変化することを「エイジング」や「経年変化」と言い、年数を経るごとに変わっていく革の表情を楽しむことができます。
日常生活の中でできるキズやシミも味わいの一つとなり、エイジングの表れ方は使う人によって異なるため、自分だけの革製品を育てることができます。
■耐久性が高く、長く使用できる
革は丈夫で長く使うことができるという部分も人気の理由です。
特に牛革の繊維は密度のバラつきが少なく厚みが比較的均一であるため、耐久性や強度に優れており、長く愛用することができます。また、定期的にメンテナンスすることで半永久的に使うことができるため、まさに人生のパートナーとして一緒に成長することができます。
■ファッション性が高く、選ぶ楽しみがある
一口に革と言っても原料となる牛の種類や年齢、性別によって特徴や風合いは様々。また鞣しや仕上げの方法でも仕上がりは全く異なるため、多種多様な革製品の中から自分好みの一品を選ぶことができます。また、加工がしやすいためデザイン性の優れているものも多く、こういった選ぶ楽しさがある点も、老若男女から愛される理由の1つであると言えます。
■お手入れも楽しめる
革は時間とともに水分や油分が抜けるため、定期的にお手入れをする必要があります。
革のお手入れと聞くと大変そうなイメージを持つ方もいるかと思いますが、実は意外と簡単で、慣れたら不思議とどんどん楽しくなってきます。お手入れすることで革製品に対して愛着が湧き、まるで我が子を育てる様な愛おしい気持ちになってくるのです。手間暇かけてお手入れした美しい革製品を見る時間は、まさに至福のひとときと言えますね。
◯革製品を使う上で知っておくべきこと

人生のパートナーである革製品をより長く愛用するために、知っておきたい3つのポイントをご紹介します。
■水に弱い
革の加工方法には大きく分けて「クロム鞣し」と「タンニン鞣し」の2種類があり、鞣しの方法や染色、仕上げの方法などで大きく特徴が異なるため一概には言えませんが、一般的には革は水に弱いという性質があります。
モノによっては水に濡れてしまうとシミになるだけでなく、表面が水膨れの様になってしまったり、傷やひび割れの原因となってしまうため注意が必要です。
雨の日はなるべく使用を控えるか、もしくは予め防水スプレーをしておき、万が一濡れてしまったら早めに拭くようにしましょう。そして帰宅したら風通しのよい場所で乾燥させてください。
■カビが発生しやすい
天然素材である革は繊維が均一でないため湿気がこもりやすく、カビが発生しやすいという性質があります。革靴にカビが生えていた!なんていう経験をされた方も多いのではないでしょうか。カビの発生を防ぐためには、風通しの良い場所で保管すること、そして定期的にお手入れをすることが大切で、お手入れした後は防カビ剤と一緒に保管するとより効果があります。
■お手入れが必要
革製品を長く使い続けるためには、定期的なお手入れが必要となります。前項でお手入れは意外と簡単で楽しいとお伝えしましたが、お手入れをする習慣がない方にとっては面倒に感じるかもしれません。ただ、革の種類によってはお手入れがあまり必要でないものもありますので、お手入れをしたくないという方はそういった種類の革製品を選ぶと良いでしょう。
◯まとめ

遥か昔から私たちを魅了してやまない革製品。
その魅力は革一つひとつに豊かな表情があり、持ち主の個性や使い方がそのままその製品に表れるところではないでしょうか。
一つとして同じものがない自分だけの革製品を育て、共に歩んでいく様子をぜひ楽しんでくださいね。